「むかしあるときてくてくとことこと歩いていくと世界をぐるっとひとまわりすることができました。」
ピンクとネイビーの2色のコントラストの表紙に書かれた一文にまずぐっとひかれて本を開いてしまう。
ピンクはバラ色でネイビーは夜のようでもあります。
背表紙の言葉も印象的。
添えられる文や美しいイラスト、1ページ1ページがなんだか物語がダンスしているかのような不思議な連なりの文章は、主人公の女の子9歳のローズの頭の中をそのまま映しとった独特なタッチのもの。
20世紀を代表する作家、ガートルード・スタイン唯一の児童文学を、1939年刊行のオリジナル復刻版で初邦訳。読み聞かせにもぴったりな、声に出して五感で楽しむ作品です。
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著者略歴 ガートルード・スタイン GERTRUDE STEIN(1874-1946)
ことばの実験をした作家。
アメリカ、ペンシルヴァニア州の裕福なドイツ系ユダヤ人の一家に生まれる。
ラドクリフ大学で草分け的な心理学者ウィリアム・ジェームスに師事したのち、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部を中退、兄レオのいるパリへ移り、生涯をパリで暮らした。
セザンヌをはじめ、無名時代のピカソ、マチスなどの絵画の収集家で、ヘミングウェイに文章の手ほどきをしたことでも知られる。
おもな著書に『三人の女』『やさしい釦』『アリス・B・トクラスの自伝』など。
クレメント・ハード CLEMENT HURD(1908-1988)
アメリカのイラストレーター、絵本作家。
マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本『おやすみなさいおつきさま』や『ぼくにげちゃうよ』のさし絵で、広く親しまれる。
イエール大学で建築を学んだのち、画家を志してパリへ渡り、フェルナン・レジェに師事。
その後、生まれ故郷のニューヨークに戻り、ブラウンのすすめで、絵本の仕事をはじめる。
妻のイーディス・サッチャー・ハードとの共作も多く、『かあさん ふくろう』、『ぶんぶんむしとぞう』など、100冊以上の絵本を手がけた。
マーガレット・ワイズ・ブラウン MARGARET WISE BROWN(1910-1952)
アメリカの児童書編集者、絵本作家。ニューヨーク州生まれ。
ホリンズ・カレッジを卒業後、バンクストリート教育大学に学び、子どものためのお話を書きはじめる。
その後、スコット社の編集者として、『世界はまるい』をはじめとする “子どものための現代の絵本” を企画する一方、幼い子どもの気持ちを理解することに心をかたむけて、すぐれた絵本のテキストを執筆。
42歳の若さでこの世を去るまで、100冊以上の絵本を発表した。
『おやすみなさい おつきさま』は世界中に多くの愛読者をもつ。
みつじまちこ MACHIKO MITSUJI
1964年、三重県生まれ。
洋書絵本輸入会社勤務を経て、絵本、アート、食などの分野を中心に、翻訳、執筆、編集にたずさわる。
2001年、パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店で、ガートルード・スタインを知る。
2007~12年まで、母校である青山学院女子短期大学図書館にて、欧米の古書絵本「オーク・コレクション」の調査と図録制作に従事。
おもな訳書に『フードスケープ』(アノニマ・スタジオ)、『ミシュカ』(新教出版社)、『地球の食卓』(TOTO出版)など。